べトナム人がコンビニやスーパーのレジで働いていたり、職場に技能実習生がいたりと、日常の中でベトナムが身近になりつつあります。著しい経済成長を遂げているベトナムは、留学生や技能実習生として日本を訪れる人が多いのが特徴です。
ベトナムは若い世代が多いこともあり、人材不足に悩まされる日本の企業も、優秀な人材確保に取り組んでいます。
勉強熱心なベトナム人は、ベトナムでどのような教育を受けているのでしょうか。
この記事では、ベトナムの言語学習や習い事、熱心に学習に取り組む理由について解説します。
2023年末の在留外国人数は、341万992人と過去最高を記録しています。国別では、ベトナムが2位で、全体の約16%を占める割合です。
在留ベトナム人が多い都道府県は、1位東京都、2位愛知県、3位大阪と都市部に多い傾向です。
在留ベトナム人の増加の理由は、ベトナム政府の労働政策の推進や日本側の外国人労働者の受け入れ体制の強化があります。日本国内の労働者不足に対して、べトナムの政策が一致したと考えられます。
引用:出入国在留管理庁 令和5年末現在における在留外国人数について
ベトナム人は、子どもから大人まで語学を積極的に学んでいます。語学の中でも、英語と日本語の学習が人気です。
ベトナム人は給料の良い外資系で働きたい人が多く、英語学習が非常に盛んです。小学校1年生から学校で学べる環境にあります。
現在のベトナム人の英語力は、EF英語能力指数によると、113カ国中58位です。日本は87位という結果でした。
また、別の調査でも、ベトナム人の英語力は2018年のTOEIC平均点から見ると、日本よりも少し高くなっています。
英語学習人気の高まりによって英語力は向上しており、きちんと身についていることが確認できます。教育に対する姿勢を見ると、今後も英語力は伸び続けるでしょう。
英語学習が盛んなベトナムですが、実は留学先として1位に選ばれているのは日本です。ベトナムへの日系企業の進出や、留学の費用面で日本を選ぶ人が多くいます。
また、ベトナムは親日の国であり、日本の製品や文化への関心の高さも理由のひとつです。在留ベトナム人も多いため、留学先の選択肢としても人気が高いと考えられます。
ベトナム人に人気の高い言語の一つである、日本語学習について解説します。
ベトナムで日本語教育が始まったのは、1961年のハノイ貿易大学からです。その後、他の大学にも日本語教育が広がりました。
約60年の歴史があり、現在では、小学3年生から第一外国語として授業が受けられるようになっています。
国際交流基金のデータによると、日本語学習をするベトナム人は、2021年は169,582人でした。世界で6位の学習者数を誇っています。
2015年の学習者数(64,863人)から、2018年の学習者数(174,521人)の増加数は、世界で1位を記録しました。
2018年から2021年にかけて、全体の学習者数は減少しているものの、初等教育から高等教育までの日本語学習者数は、増加しています。
2021年2月時点で、日本語教育を受けられるベトナムの学校は、63省市のうち10省市でした。内訳は、高校36校、中学校81校、小学校2校です。
また、ベトナムは学校教育以外の教育機関で、日本語を学ぶ人が最も多いことが特徴です。学校教育機関以外には、技能機能実習生の送り出し期間や、大人向け日本語学校、従業員の企業内教育を行う企業などがあります。
日系企業で働くために日本語を身につけようと、大人も日本語を学んでいることがわかります。
日本語学習者数比較
単位[人]
2018年 |
2021年 |
|
初等教育 |
2,054 |
3,986 |
中等教育 |
26,239 |
30,590 |
高等教育 |
31,271 |
45,752 |
学校教育以外 |
114,957 |
89,254 |
合計 |
174,521 |
169,582 |
参照:国際交流基金
ベトナム人が民間の学校を選ぶ際は、以下の3つを参考にしています。
日本語学習者は、英語学習者より学校に通っている人が多いですが、学校に通わずにWebや動画サイトで、学んでいる人もいます。
参照:SlideShare from Scribd How does Vietnamese study language
日本語を母国語としない人を対象とした日本語能力検定は、日本語を学ぶベトナム人の多くが受験します。受験目的としては、就職や昇給のための実力測定に活用されます。
レベルは5段階にわけられ、N1~N5まであり、N1が最も難しい設定です。ビジネスシーンで日本語を使用する場合、N2以上のレベルが望ましいとされています。N1からN5までの日本語能力の目安は、以下の表を参考にしてください。
レベル |
認定目安 |
N1 |
幅広い場面で使われる日本語を理解することができる |
N2 |
日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる |
N3 |
日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる |
N4 |
基本的な日本語を理解することができる |
N5 |
基本的な日本語をある程度理解することができる |
引用:日本語能力検定試験HP
2023年7月に開催された日本語能力試験のベトナム人受験者は、26,245人でした。どの都市もレベルごとの受験者割合はあまり変わらず、N2とN3の受験者数が多いことから、合格のハードルが高いことが予想されます。
2023年第1回ベトナム人受験者数
単位[人]
N1 |
N2 |
N3 |
N4 |
N5 |
合計 |
|
ハノイ |
1,517 |
3,712 |
3,599 |
2,457 |
1,072 |
12,357 |
ホーチミン |
1,065 |
2,338 |
3,120 |
2,724 |
1,916 |
11,200 |
ダナン |
205 |
479 |
533 |
443 |
319 |
1,979 |
フエ |
36 |
207 |
228 |
144 |
94 |
709 |
合計 |
2,823 |
6,736 |
7,517 |
5,768 |
3,401 |
26,245 |
引用:日本語能力検定試験 2023年第1回(7月)実施国・地域別応募者・受験者数
ベトナムでは、幼児教育の普及を推進しており、日本語だけでなく、日本式の教育も注目されるようになりました。
私たちが当たり前に受けてきた日本の幼児教育には、7つの特徴があります。
参照:文部科学省 日本型教育の海外展開推進事業(日本の幼児教育、7つの特徴(国立大学法人お茶の水女子大学 教授 浜野)
日本の保育園や幼稚園は、子どもが楽しみながら生活の基礎を学んだり、好奇心を育ませたりできる環境が整っています。また、教員の教育も行き届いており、質が高いです。
教育に熱心な国であるベトナムでは、日本式教育が導入されはじめています。日本の質の良い教材は、楽しみながら学ぶことが可能とされています。
日本の幼児教育内容を、ベトナム人の子どもたちに受け入れられるように改良し、教育現場に導入することも進められています。豊富なコンテンツは、ベトナムの子どもたちにも人気で、積極的に学ばれています。
人口の増加にともない、ベトナムの学校では、午前と午後の2部制に分かれています。義務教育での学習時間が、十分に確保できていないことが問題とされています。
そんな中、ベトナム人の子どもが習い事をするメリットとして、学習時間が増えることが期待されています。
民間の教育機関で学ぶことで足りない学習時間を補填し、子どもの学力向上に繋がることが求められています。
ベトナム人の子どもたちが、どのような習い事に通っているか紹介します。
ベトナム人の親は、子どもの将来のためにより良い教育を受けさせようと、学校教育に加えて習い事をさせる家庭が多いです。外資系企業へ就職を意識し、高収入を得られるように願う家庭も存在しています。
都市部の小学生は7割以上が習い事に通い、年齢が上がるにつれて、かける費用が高くなる傾向です。子どもたちは、放課後の習い事にも熱心に取り組んでいます。
習い事の中でも、特に言語学習が人気です。圧倒的に人気な言語は英語で、2位が日本語です。
学校教育以外でも学ぶ子どもが多く、家庭によっては就学前からスマホアプリを活用し、英語に触れる機会を早い時期からつくっています。
ベトナムは理数系にも力を注いでいるため、算数の習い事も好評です。就学前に算数を学ばせる家庭や、学校の授業内容は、日本の義務教育より早い学年で学びます。
ベトナムは、世界の15歳を対象とした経済協力開発機構(OECD)の調査で、世界的に見ても理数科目の理解度が高いです。2012年と2015年には、科学的リテラシーの得点で、過去最高順位の8位を記録しました。
論理的思考を鍛えることによって、将来IT業界への就職も期待されています。
ベトナムの学校では、プールがなく体育の授業時間が少ないことから、身体の発育のために水泳に通う子どももいます。ベトナムは、沿岸部に位置する国ですが、泳げる人は少ないのです。
2020年の国民栄養調査では、ベトナム人の子どもの肥満が急速に増え、増加数は10年間で2倍以上という結果がでています。食生活の変化や、細い子どもは貧しく見えるという考え方から、ホーチミン市で暮らす半数の小学生が肥満傾向にあるといいます。
健康のためにも学校教育だけでは難しいスポーツの習い事は、今後も人気が高まるでしょう。
ベトナムの夏休み期間には、サマーキャンプが開催されています。テレビやスマホなどのデジタルなものから離れ、日常生活では経験できない体験をさせてあげたいと需要が高い習い事です。
サバイバルを体感できる本格的なキャンプや、音楽やスポーツ、英語、武術など様々な科目を設けているコースがあります。開催日程も1週間や1ヶ月などコースによって異なりますが、期間関係なく好評です。
現代社会から少し離れて、違う環境で学ぶことは、子どもたちにとって良い刺激となり思い出に残るでしょう。
ベトナムの教育事情について、国が掲げている政策や教育方針、子どもたちの教育について解説します。
国は「教育への投資は、発展の投資」として、教育分野への投資を積極的に行っています。政府は、外国語と情報技術の強化、教育のデジタル化を推進中です。
今までの「外国語教育プロジェクト」が一部変更となり、2017〜2025年期のプロジェクトとして承認されました。2025年までに、小学校3年生以降の生徒全員が、英語を学習できる環境に整えるという目標を掲げています。
また、インダストリー4.0(第四次産業革命)に対応できる人材育成のために、情報技術も重要分野と認識し、コンピューター学習を必須科目にするようすすめています。
ベトナムの教育法は2019年に改正され、2022年に施行されました。教育法改正により、現在の義務教育期間は、10年間です。
1998年の教育法では、義務教育の期間が小学校5年間、2005年では9年間と制定されていました。社会全体で教育の普及と、水準を上げるための政策がなされていることが伺えます。
現在のベトナムの義務教育は、就学の1年前から中学校卒業までの10年間です。
画像引用:日本貿易振興機構(ジェトロ)デジタル貿易・新産業部
教育機関 |
教育内容 |
保育園・幼稚園 (~5歳) |
・2019年に就学前の1年間(5歳)が、義務教育に含まれた ・五感や感情を育み、心身の発達を促す教育を行う ・小学校の準備段階として、歌やゲームなど子どものニーズや興味に応じた内容 ・文字教育は教育現場では行われないが、就学前に塾に通う家庭も増加中 |
強制教育 小学校(5年) |
・小学校1年生から英語教育が取り入れられる ・在学中に英語強化プログラムも選択可能 ・小学校3年生からコンピューター教育がスタート ・ネイティブ教師が、数学や科学、英語を教え、英語に触れる機会が多い |
基礎中学校 中学校(4年) |
・英語以外の語学を学べるプログラムが用意される(中国語、フランス語、日本語など) ・入試を設ける学校もあり、英語で出題される試験に合格しなければいけない |
普通中学 高校(3年) |
・基礎中学に引き続き、外国語の強化プログラムで学ぶ ・2019年の教育法改正により、卒業試験に合格すれば卒業証書が発行 ・不合格は、普通教育カリキュラムの修了証明書が授与 |
ベトナムでは国際的な人材を育てるために、英語教育を早い段階から取り入れています。
初等教育では、英語に親しみをもってもらうため触れる程度ですが、小学校1年生から、週に2コマ授業があります。希望者は、週8コマある英語強化プログラムを選択することも可能です。
18歳~29歳の大学進学率は、28.3%です。他の国と比べると、あまり高い割合ではありません。
高校の卒業試験合格と学校の成績をあわせた結果が、大学進学の基準です。しかし、金銭的な理由や家族の了承が得られないことから、進学を断念せざるを得ない人もいます。
ベトナムの大学進学率は高くありませんが、教育を受ける男女に格差がないことが評価されています。
教育熱心なベトナムですが、都市部と、山岳部や農村部では教育格差が生まれています。地域による教育格差は、国としても課題の一つとしています。
格差がでる理由としては、地方に指導力のある教員や教材の不足、親の教育に対する理解度が低いことがあげられます。
また、給料面で都市部と地方では差があるため、子どもにかけられる教育費にも差が生じます。
ベトナム人の給料は年々上昇しており、日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、2022年のベトナム人の平均月収は467万ドンです。2年前の425万ドンと比べると、1割程度増加しています。
しかし、農村部と都市部では1.5倍ほどの給料の違いや、同じホーチミン市でも、低所得と高所得の世帯では、約7.6倍と大きな差です。
ベトナム人が子ども1人にかける教育費は、支出額が1番多いホーチミン市と、最も少ない北部山岳地方では、3.3倍もの違いが生じています。
給料の差によって、子どもの教育費に充てられる金額も変わるため、地域や収入差での教育格差が懸念されます。
ベトナム人が、幼児教育を含めた教育に対して非常に熱心なのは、教育や学校を重視する国であり、儒教の影響が強いからです。
また、ベトナム人は、家族をとても大切に思っています。家族のために日本で働く選択をしたり、子どもの将来のために質の良い教育をさせたいなど、家族とのつながりが強く、支え合って生活しています。
近年テクノロジーを活用し教育を支援するサービスであるEdTech市場が、拡大しています。コロナ禍によって世界でも多くの影響を受けたのが教育分野です。
学校が閉鎖され、対面授業ができなくなったことで、EdTech市場が注目されました。世界から見ても、ベトナムのEdTech市場は、需要が高いです。
ベトナムの教育訓練省には、幼児教育から高校3年生までの電子化された教材が元々設置されていました。本来は自習のために用意されていましたが、コロナ禍によって利用者が増えました。
ベトナムはスマートフォンの普及率が高く、成人であればほとんどの人が保有していることから、教育のデジタル化が加速中です。
一方で、山岳部や農村部には、スマホ以外のデバイスが行き届いていないこともあり、教育環境に差がでています。
ベトナム人に人気のeラーニングを紹介します。ベトナムでは、高学歴を目指すための幼児教育に注目が集まっています。教育アプリは、習い事よりも費用が抑えられると、都市部では普及してきています。
eラーニングで英語学習が、人気です。自宅から気軽にできることや、ネイティブ講師との英会話が可能な教材があります。
ベトナム国内のみならず、海外の企業のeラーニングも導入されているため、選択肢に広がりを見せています。
STEAM教育とは、「科学」「技術」「工学」「芸術」「数学」の5つの分野を学ぶことです。広い視野を持って問題解決力や創造力を身につけられると、2015年にアメリカで誕生しました。
幼児教育の高まりから需要が高まっているものの、教育現場での導入は発展途中の段階のため、eラーニングで人気が出ています。
ベトナムは、理数系の科目を重視する教育を行っているため、日本のそろばんも注目される教材の1つになっています。
さらに、eラーニングのコンテンツとしてのそろばんは、AIを活用しゲーム感覚で学べることで人気です。開発側の意見としては、そろばんはタブレット端末で再現しやすいと言われています。
ベトナムでは、子どもだけでなく若者も勉強に熱心に取り組んでいます。eラーニングの需要の高まりから、ベトナム国内の企業だけでなく、海外の企業も参入しました。中高生向けのeラーニングだけでなく、社会人向けも拡大中です。
若者は「家族のためにお金を稼ぎたい」と考え、語学を自主的に学んでいる人が多くいます。大人向けeラーニングでは、英語やプログラミングなど自身のスキルアップに直結する内容が人気です。
大人も子どもも将来を見据え、自分に投資できる教育に、お金をかける傾向があります。
今回は、ベトナム人の言語学習と習い事について解説しました。
ベトナムの国や人を理解することで、関わりをより豊かにすることが可能です。
LocoBeeでは、ベトナム人をターゲットにしたPRのお手伝いをしております。ベトナムに関する情報を知りたい方は、ぜひお問い合わせください。