日々増加する訪日外国人観光客。その中でも近年増加している訪日ベトナム人観光客をターゲットにする企業が増えています。
しかし、ベトナム人について詳しく知らないと、どんなマーケティング戦略が効果的なのか、悩むところです。この記事では、ベトナム人観光客の消費傾向と集客に役立つ情報をお伝えします。
この記事が、ベトナム人観光客を対象にしたビジネスで大きく成功する一助となれば幸いです。
訪日ベトナム人観光客の消費行動の傾向を分析するためには、まずはベトナムやベトナム人の社会的・文化的背景等を知っておく必要があります。ベトナム人と日本人は国民性が似ていると言われることが多いのですが、日本人の感覚と異なる点も多いので注意が必要です。
ベトナムは急速な経済成長を遂げており、特に都市部では中産階級の急増が見られます。この社会的変化により、海外旅行への関心が増大しています。
国内総生産(GDP)に基づく経済成長率は、コロナ禍前は6%前後で推移してきました。コロナ禍でいったん落ち込んだ成長率も、2024年には5.82%まで回復すると見込まれています。富裕層や中間層が年々拡大していることから、購買力が向上しており観光消費の増大へとつながっています。
ベトナムでは家族を重んじる文化的背景を持ち、伝統や祖先を敬う傾向にあります。このような価値観は、旅行中の行動パターンにも影響を与え、家族や友人へのお土産選びにも現れています。
新年や旧正月といった節目では、普段よりも特に高価格帯のお土産を選ぶ傾向が高くなります。
ベトナムはハイコンテクスト(高文脈)文化の国です。話の内容を文面通りに受け取るのではなく、その話の背景や前後の文脈等も考慮して会話をしています。日本もハイコンテクスト文化の国なので、ベトナム人と日本人が会話していて言葉が通じているように見えても、すれ違い状態になりやすいといわれています。そのため、日本を訪れたベトナム人は、コミュニケーションが問題になる可能性があります。
ベトナムでは、若年層を中心にインターネットの普及が進んでおり、特にスマートフォンを利用したSNSでの情報収集が盛んです。2024年初頭のベトナムのデジタル事情は以下の通りです(2024年1月時点のベトナムの総人口は9,919万人)。ベトナムの成人のほとんどが、何らかのSNSを使用していることになります。
ベトナム人は、ブランド商品に対する高い関心やこだわりがあり、購入する際には品質と価値を重視します。また、「お得感」を重視する傾向もあり、セールや割引クーポン・無料サービス等のキャンペーンに敏感です。消費税が免除される免税対象商品には特に注目が集まり、免税店で購入する観光客も多くなっています。
ベトナムでは、若者を中心に、単なる観光から体験型旅行への関心が高まっています。料理教室や農業体験、伝統工芸の学びといった文化体験活動への参加意欲が、年々増加しています。
JNTOでは、外国人観光客向けに「ヘリコプターでの富士山観光」のようなハイエンドな旅行体験を提案しています。そういった旅行体験も今後増加することが考えられます。
ベトナム人観光客は、日本独特の商品に非常に強い関心を示します。特に日本の伝統文化が感じられる製品、地域限定の食品、または日本国内でのみ手に入る特定ブランドの商品が好まれます。これにより、地方の特産品店や限定品を扱う店舗は大きなチャンスとなっています。
ここでは、マーケティングに役立つベトナム人観光客の基本情報について詳細に説明します。
前述のベトナム人観光客の特徴とあわせて押さえておきましょう。
2023年に訪日したベトナム人観光客の年齢層や性別等をデモグラフィック分析した結果から、以下の傾向が見られます。
出典: 観光庁 「訪日外国人の消費動向 2023年 年次報告書」
訪日ベトナム人の数を月別に分析したデータによると、以下の傾向が見られます。
出典: JNTO 「訪日外客統計 国籍/月別 訪日外客数(2003年~2024年)」
近年の訪日ベトナム人観光客数について配下のようになっています。
2023年の訪日ベトナム人観光客数は573,916人と直近10年では一番多くなっています。コロナ禍前の2019年の495,051人と比べても、15.9%も増加しています。
出典: JNTO 「訪日外客統計 国籍/月別 訪日外客数(2003年~2024年)」
2023年のベトナム人観光客の消費額は、1,213億円と直近10年で最高額となっています。コロナ禍前の2019年の875億円と比べても、38.6%と大きく増加しています。
その支出内容を分析すると、以下の傾向が見られます。
出典: 観光庁 「訪日外国人の消費動向 2023年 年次報告書」
ベトナム人観光客の消費パターンを分析することは、ビジネス戦略を立てるうえで重要です。
ここでは、買い物についての支出内容や購入単価・購入場所を分析しています。
2023年のベトナム人の一般客1人あたり旅行支出額は、211,330円です。これは、欧米諸国からの観光客と比べると低めですが、訪日客全体の平均である212,764円と同程度になります。ベトナム人観光客の日本での支出内訳と購入者単価は、以下の通りです。
1位: 菓子類 14,086 円
2位: その他食料品・飲料・たばこ 15,615 円
3位: 衣類 24,423 円
4位: 化粧品・香水 26,175 円
5位: 医薬品 20,115 円
6位: 靴・かばん・革製品 39,811 円
7位: 酒類 13,211 円
8位: 健康グッズ・トイレタリー 29,051 円
9位: 電気製品 34,936 円
10位: 生鮮農産物 34,183 円
出典: 観光庁 「訪日外国人の消費動向 2023年 年次報告書」
ベトナム人観光客の主なお土産の購入場所は以下のようになっています。
コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアは「菓子から日用品まで、多種多様な日本的な商品を安く手軽に購入できる店」として外国人観光客に人気があります。
1位: コンビニエンスストア
2位: 空港の免税店
3位: 百貨店・デパート
4位: スーパーマーケット
5位: ドラッグストア
出典: 観光庁 「訪日外国人の消費動向 2023年 年次報告書」
ベトナム人観光客が好む日本の商品について、少し詳しく見ていきます。
人気の高い5つの商品カテゴリーについて、特にどのようなものが好まれるのかを紹介します。
日本の美容・コスメ製品は、機能性の高い成分と製品自体の品質の高さからベトナム人観光客に非常に人気があります。特に、「資生堂」や「SK-II」等のブランドは、ベトナムだけでなく、アジア市場全体にもその名声が知られ高い評価を受けています。
また、アンチエイジング効果や美白効果を謳うスキンケア製品も人気です。これらの製品を求める顧客の多くが、オーガニックや無添加等、肌に優しい製品を好む傾向にあります。
日本のアパレル市場は、ユニークなデザインと高品質な商品で有名です。特に、東京の渋谷や原宿は、最新のファッショントレンドが息づいており、多くのベトナム人観光客が訪れます。
若者向けのブランドでは、「ユニクロ」や「BEAMS」等が人気で、これらの店舗ではベトナム人向けの多言語サポートを展開している店舗もあります。特にデニム製品やアウトドア関連商品の需要が高くなっています。
日本食は、世界中からその技術と味で高い評価を受けています。ベトナム人観光客に人気の高い日本の食品は、抹茶、和菓子、ラーメン等です。地域限定のスナックや特産品も特に好まれ、これらのアイテムはお土産として購入されることが多いです。例えば、北海道の「白い恋人」や京都の「八つ橋」は、ベトナム人にも非常に人気のある商品です。
日本製の靴は、その品質とデザインの良さで知られており、特に機能性とファッション性を兼ね備えたスポーツシューズが人気です。「アシックス」や「ニューバランス」のようなブランドは、ベトナムでも知名度が高く、訪日時にこれらの商品を購入する観光客が多くなっています。
また、畳の素材を用いた靴や伝統的な技術を取り入れた靴等、独特な商品も外国人観光客の関心を引いています。
日本は精密機械工業が発達しており、時計製造でも世界をリードする国の一つです。「セイコー」や「カシオ」等のブランドから出ている時計は、先進的な機能を有しつつ、手頃な価格であることが多いため、ベトナム人観光客には特に人気があります。
特に、スプリングドライブやソーラー駆動システムを搭載したモデルは、日本独自の製品として注目されています。
訪日ベトナム人を集客するためには、どのような方法で旅行の情報収集をしているのか、日本の観光地にどのような不満があるのかを知っておくことが重要です。
ベトナム人観光客は、訪日前に知人から旅行に関する情報を得ることも多いですが、それ以外には主にSNSやニュースサイトから情報を得ています。
外国旅行の情報収集に使うオンライン媒体ランキングの1位はYouTubeで、FacebookやTikTok等のSNSや、VN Express、VietNamNet等のニュースサイトが上位を占めています。
ベトナムではYoutubeやFacebookを利用して情報収集する旅行者が多く、これらのプラットフォームに適したマーケティング戦略を立てることが重要です。
ベトナム人観光客は、通信費用を抑えるために無料Wi-Fiスポットについて検索をすることが多いです。旅行中に役に立った情報の第4位が「無料Wi-Fi」となっています。
しかし、無料Wi-Fiサービスの品質に不満を持つことがあり、ホテルや観光地でのWi-Fi環境の整備は必須です。快適なインターネット接続が可能であることをアピールすることは、観光体験の向上に直結します。観光施設や公共交通機関でのWi-Fiの安定性と速度を保証し、容易に接続できることが重要です。
出典: 観光庁 「訪日外国人の消費動向 2023年 年次報告書」
ベトナムは元々現金決済の割合が高い国です。コロナ禍を経て国内でキャッシュレス決済は急速に普及しましたが、現在でも多くのベトナム人観光客は現金での支払いを好みます。そのため、日本でのキャッシュレス決済手段に対して戸惑いや不満を感じることがあります。
クレジットカードや電子マネー、QRコード決済等、様々なオプションについて分かりやすい説明とサポートを提供し、安心して利用できる環境を整えることが集客のカギとなります。
ベトナム人観光客の集客力を高めるためのマーケティング戦略を紹介します。
近年は、あらゆるビジネスで特にSNSを上手に活用することで集客に成功している例も多いです。SNSを適切に利用することがカギとなります。
ベトナムの若者を中心に、FacebookやTikTok、Instagramの利用者が非常に多いです。これらのプラットフォームでの積極的なプロモーションにより、訪日意欲を高めるだけでなく、具体的な旅行計画へとつながります。また、Facebookを通じて特定の投稿やストーリー機能を用いることで、ターゲット市場に対して直接的なメッセージを発信することができます。リアルタイムのインタラクションを活用して、質問やコメントに迅速に対応することも有効です。
ちなみに、日本でのSNSの代表的な存在であるX(旧Twitter)の利用者は、ベトナムでは非常に少ないので注意が必要です。
ベトナムの主要都市、特にハノイやホーチミン市における屋外広告やデジタルサイネージを活用して、ブランドの認知度を高めます。また、Google広告やFacebook広告を利用したオンライン広告キャンペーンを展開し、特定のターゲット層に直接的にアプローチする方法もあります。
広告の内容は、ベトナムの市場に合わせてカスタマイズされ、文化的背景や個人の好みが反映されるべきです。例えば、ベトナムの伝統的な祝日やイベントにちなんだプロモーションを行うことで、共感を呼びやすくなります。
ベトナムからの訪日を促進するために、限定商品の提供や特別割引、さらには季節ごとの祭りやイベントを企画します。これらは桜や紅葉のシーズン、年末年始といった特定の時期に実施することで、相乗効果により日本旅行への気持ちをいっそう盛り上げることができます。
また、これらのキャンペーンやイベントはSNSやWeb上で広く宣伝することで、事前のエンゲージメントを高める要因となります。
ベトナム語対応のガイドブックの配布や、観光情報サイトのベトナム語対応ページの強化、多言語対応スタッフの配置が重要です。また、Webサイトや観光案内所では、疑問点・不明点の解消に役立つFAQセクションを設けることも効果的です。
ベトナム人の消費パターンの理解は、今後の日本のマーケットにおいて非常に重要です。
訪日ベトナム人はもちろんのこと、在留ベトナム人の消費動向も今後のマーケティングには欠かせない情報です。SNSの効果的な利用や多言語対応の強化が重要であり、Wi-Fiや決済方法の改善はサービス向上に直結します。
LocoBeeでは、ベトナムに特化したメディアとして、ベトナム人向け施策のお手伝いをいたします。ベトナムの可能性について知りたい、ベトナム人をターゲットに考えている方は、お気軽にご相談ください。